2021/10/05 20:51
こんにちは。
デザイナーの武石です。
今回の【デザイナー’s Blog】は、『たまには白黒はっきりしなくても良い おはなし』です。
色違いって、迷いますか。
私はあまり迷いの無い方かなぁ・・・。(←迷いが有るか無いかで既に迷っている)
白か黒かどころか、黒かチャコールグレーかで迷える繊細な感覚をお持ちのあなた様に向けて、
今こそ「白黒はっきりしなくて良し。」と言いたい。
今日は、シャツなのかブルゾンなのかはっきりしないけどそれこそが君の魅力、的なアイテムについて、お話しをしたいと思います。
それがこちらのウィンドウペーンシャツブルゾンです。
さて、私たちブランドが商品の色展開を考える時。
それはそれはもう悩まないことは無いというくらい、非常に難儀かつ重要なポイントなので、何日もかけて色んなアプローチの方法を使って取捨選択してゆきます。もんもんもんもん・・・(←脳から漏れ出る音)
業界一般的には「折角色違いを作るなら、違う役割を持たせたい」という主旨で似寄らない色をピックアップします。
例えばブルー・ベージュ・黒など。
それでいくと、黒&濃紺とか黒&チャコールグレーなどの近似色は、通常は真っ先に排除されがちな組み合わせです。
ですが、時に「この生地が最大限に活きるのは黒とチャコールグレーで、しかも甲乙つかない」という困った事象が発生します。
つまり、自分がお客さんだったらこの2トップでしか迷わん。という。
そして作り手としては、他の色を入れるくらいならいっそ何もかもやめちまえ。という。
ですからね、敢えて「濃紺と黒」とか「白とアイボリー」とかで色展開しているブランドなんか発見ると
「く〜〜〜、やるぅ〜〜!!」
と、勝手にシビれたりします。わかるよーわかるよーーという。
で、今回うちでやったのがこの2色なんですけどね。
おお〜遠くから見たらどっちも同じ色ーーー。ですが、近くで見て。
この生地は、黒もグレーも完璧に良い発色しています。
(あ、同じ黒でもね、全然違うんですよ。試しにお手持ちの黒い服を何着か並べてみて下さい。)
毛羽のない上品な表面感。
そこにこの細ーーい筋糸からなるウィンドウペーン。
この格子、随分と か細い。
居るの?居ないの?あ、やっぱりそこに居たんだね。といういじらしさ。
まるで地の美しさを邪魔したくないんだと言わんばかりじゃないか。
いいやちがうよ、君が居ることでこの生地は完璧になるんだよ。
いかんまた生地との対話始めちゃった。
今早めの帰還。シュッ
さてこの素材は、スーツ生地を得意として扱う生地屋さんから仕入れました。
シャツのディティールが強めだけど、アウターとしての頼もしさも感じられる理由の一つはここにあります。
この生地はスーツのパターンに乗せて送り出せば、すんなり立派なスーツとして「ただいま」と帰って来ることの出来る、優等生なのです。
今回 おかえり と迎えたのはちょっとしたひねりを効かせた、洒落者のシャツブルゾンだったというわけなのであーる。
WINDOWPANE SH BLOUSON / ウィンドウペーンシャツブルゾン(GRY)
モデル身長:173cm 体重:60kg 着用サイズ:4
ディティールはこんな感じ。
少しだけ深めのVゾーンは、インナーを挟むことも想定し設計されています
WINDOWPANE SH BLOUSON / ウィンドウペーンシャツブルゾン(BLK)
今季のボリュームハイネックとも相性抜群です。
モデル身長:173cm 体重:60kg 着用サイズ:4
袖周りもKics Document. ならではの拘りは健在。
剣ボロのボタン位置は、カフスボタンを外して着た時に不用意に開き過ぎない様、浅めに設置しています。
かゆい所に手が届く。それがKics Document.
あ、ここにこんなステッチが入っているのは何故だかご存知でしょうか。
着用している時に“身返し”と呼ばれる裏地が飛び出して来ないように抑えているのです。
でも、それはあくまで機能面で必要なステッチなので表にはなるべく見えない位置で留めてあります。
Kics Document. のどんなアイテムも、こういった細かな気配りの積み重ねが一つの美しいデザインを形成しているのです。
で、実際にこんな風に立派な姿になるまでには、私が描いたデザインを型紙に起こしてくれるパタンナーが居て、それを組み立ててくれる職人(工場)があって、というわけなのですが、次回はこの機会に私が大変信頼しているシャツ専業工場について少しだけ詳しくお話ししたいのです。
この工場さんやKics Document.の真髄である日本の職人技が活きる生産背景について、後編に続く〜。
ということで近日中にまたお会いしましょうぞ。(さらっと言ったけどこの投稿が終わったらまた必死で書かねばならない)
ではまたお楽しみに〜。
デザイナー
武石