2020/11/18 17:15
こんにちは。
デザイナーの武石です。
今回の【デザイナー’s Blog】は、『みんなが主役、ブリティッシュウール混チェック 3点セットアップのおはなし(後編)』です。
ちなみに前回お話しした2つボタンジャケットについてでは、着用画像をアップしていなかったので、遅ればせながら・・。
トップバッターのジャケット氏、お疲れ様でした。
ベントの話でかなり盛り上がりましたよね。(私がね)
さて、本日はいよいよショートブルゾンとダブルタックパンツについてご説明しましょう。
どれもKHONOROGICAの人気型で、形自体は何年も継続しているものです。
折に触れて、「当ブランドの商品は、品質・デザインに於いてどれを取っても来年着られなくなるものは有りません」とお伝えしております。
なぜなら、一型一型開発の段階でかなりの時間をかけてサンプリングしており、完成度が限りなく高いものしか商品化しないからです。
ということで当ブランドはシーズンを通して取り扱っている品番や、生地を変えながら何年も継続する定番型も多いのです。
ではずーっと変わらないのかというと、実はそうではありません。
自分が着用していて気付いたことや、何か改良に繋がるご意見を頂くことがあれば都度アップデートを行い、どんどん良いものにしていこうというのが私の考え方です。
例えばこのショートブルゾンは既に4シーズンを経ていますが、分かりやすい着丈や裾幅の寸法変更の他には、肩幅を1.5cm小さくしてアームホールを8mm広げる、なんていうことをやっています。
それくらいだと、見た目にはあまり分からないですが、着心地には影響します。
C/W PLAID SHORT BLOUSON / 綿ウールチェックショートブルゾン(BRN) ¥42,900(税込)
それにシーズンによって全く趣(おもむき)の違う生地を乗せるので、毎度生地の厚み分や縫い代の広さなど、パターンの微調整が行われています。
ちなみに長年お付き合いのあるバイヤーさんはそれらをけっこう見事に見抜きます。(超嬉しい)
さすがですよね。
品質に於いても「今回はここに補強が必要だな」とか、逆に「ここは過剰だから削って更に軽量化しよう」とか、改良を加えることは日常茶飯事です。
糸や生地というのは鉄や鋼とは違うので、少しの力の掛け具合で破損も起こりうる繊細で脆いものです。
それでも出来る限り長く着て頂くためにはどうしたら良いか、パタンナー・職人たちとの研究は欠かせません。
しかしですね、ブランドが長くなると着てくださっている方の歴史も積み上がり、
「ちょっとー、着すぎて首の後ろ黄色くなってきたー。」
とか
「これしか穿かないもんだから股のところ破れちゃったよー。」
とか、てへへ的な報告を頂くことも最近よくありますよ。
どうしたものか。
うん、それはあれだな。
買い替え時!!
・・ということで、今季のブルゾンについてもう少しお付き合い下さい。(ていうかほとんど始まってない)
生地の素晴らしさについては、存分に前編でお伝えしておりますので、そっちで読んでね。
前回触れていないポイントとしては、生地内側の起毛でしょうか。
起毛すると毛のもじゃもじゃの中に空気を含むので、温かさが断然違います。
ちらっ
そしてそしてこちらのブルゾン、わたくし的拘りポイントは、この衿とポケットのフラップです。
あ、シルエットとかじゃないんだ・・って?
ええ、ええ。もちろんシルエットに関してはこだわりにこだわっており、それはもう言わずもがなであります。
でも折角ですので、このブログでは普段皆さんがあまりじーーっと観察しないであろう部分をご説明したいのです。
まず、この衿見て下さい。
微妙に外側のラインがインカーブしています。
このアウトラインが着地するのは、丁度鎖骨のあたりです。
鎖骨のあたりは肩から胸にかけてなだらかに盛り上がるとと共に、鎖骨の出っ張りが出てきます。
その盛り上がりを無視して直線の衿をつけると、衿がきちんと沿わず跳ね上がるのです。
このインカーブをつけることによって、きちんと人体のフォルムに収まるということです。
そういえば、KHONOROGICA(コノロジカ)のレーベル名の由来をご存じでしょうか。
(※同じKics Document.ですが、コート、ブルゾン、パンツ、シャツ(ハイエンドライン)にはこのネームがついています)
K=Kics Document.の頭文字
HONOR=名誉・栄誉
ROGICA=Logicalが元となっており、HONORとくっつけたもの、論理的な・道理の通った
です。
その造りや精神に栄誉を与えられるような、論理的で、道理の通った服を発信すべく生み出されたレーベル名なのです。
いつもこのブログが長くなってしまって申し訳ないと思っているのですが、どのパーツにどんな理屈があってどんなラインが描かれているのか、どうしてこのサイジングになっているのか、なぜこの生地を選んだのか、全てに一つ一つ理由と拘り、理屈があるので、それらを説明しようとすると、どうしてもこのようになってしまいます。
いつも実はこの倍くらいの分量の文章を書いているんですよ。
そこからたくさん削って、付け加えてはまた削って、少しでも読みやすいものになるようこれでも努力しています。
このプロセスは服作りと似ています。
さて、このフラップには見た目のデザイン的な意図もありますが、やはり真髄は機能的なこと。
このブルゾン、身幅がとても広いんですよね。
そうすると必然的にポケットも大きく取ることが出来て大変便利なのですが、その分ポケットの両サイドは脇に近くなり
着用すると袖が当たります。
腕を上げ下げしたり前後に振ったりした時にフラップの端を撫でるわけですが、ここでフラップの端が角だと、それにつられて反り上がってしまう可能性が高くなります。
絆創膏の端、丸くカットされていますよね。
なぜでしょう。
角になっているとめくれやすいからです。
ここにも、そんな理屈が潜んでいます。
さ、この辺でもう少しライトにいきましょか。
そうそう、背中に空気をはらむようなパターンがこのブルゾンのハイライトです。
このラインを出す為に、前身頃に比べて後身頃の生地分量をかなり多くしているのだけれど、この分量調節が本当に難しかったなぁ。
理想の形になるまでに、ここ、一番多く修正しました。
タックの分量も位置も何度も変えてみて、パタンナー泣かせの1着です。
その甲斐あって、最後にはちゃんと理想の形が出来ました。
サイドから見た姿が本当に気に入っています。
着丈は始めの方のシーズンはもっともっと短かったのですが、今は大体腰骨くらいの位置になっています。
この子の優秀ポイントはそこにもあります。
何せ太いボトムとのバランスが取りやすい。
C/W PLAID SHORT BLOUSON / 綿ウールチェックショートブルゾン(BRN) ¥42,900(税込)
C/W PLAID DOUBLE TUCK PANTS / 綿ウールチェックダブルタックパンツ(BRN) ¥31,900(税込)
※商品ページでは着用動画が掲載されています
とりわけ身長が高くない人にもオススメです。
トレンドではありますが、着丈長いトップス+ボリュームパンツ だとずるずるしすぎて、さらに小さく見えたり太って見えたり、どうしてもバランスが悪くなりがちだからです。
私は女性なので、男性でも背が低めな方のバランス感は特によく分かります。
高身長な人が似合う服と、身長が低めの人の方が似合う服というのがあるので、それぞれ自分に合うものを選ぶというのが大事になってきます。
でも、そのあたり正しくない思い込みをしている方が多いな、とよく感じます。
「自分は背が低いから太いパンツは似合わないんです。」というのは一番よく聞く間違いです。
もちろん全部とは言いませんが、あるんですよ、似合う太いパンツがいくらでも。
でも店頭で「違うの、そうじゃないのですよー!」と言っちゃうと、太いパンツを押し売りしてるみたいになる場面が結構あって、あまり強く言えないのが歯痒いっす。
え、ウソ教えてよ!という方はどんどん聞きに来て下さい。
まずはここでその『太いパンツ』ご紹介しますね。(つながった嬉)
もうこの方は当ブランドのキングですね。
ダブルタックパンツ。
C/W PLAID DOUBLE TUCK PANTS / 綿ウールチェックダブルタックパンツ(BRN) ¥31,900(税込)
C/W PLAID DOUBLE TUCK PANTS / 綿ウールチェックダブルタックパンツ(NVY) ¥31,900(税込)
何と言っても、この深い深いタックからビシッと入ったクリースライン。
これがとても上品な雰囲気を醸し出しております。
今回は特に、ブリティッシュウール生地の品が良いですが、
この形はスニーカーを合わせればカジュアルに、ドレスシューズを合わせればとてもドレッシーに仕上がります。
いずれにしても、迫力があるんですよね。
Tシャツでもスウェットでもキマるし、ジャケット合わせなんて一張羅感がすごい。
C/W PLAID DOUBLE TUCK PANTS / 綿ウールチェックダブルタックパンツ(BRN) サイズ5 ¥31,900(税込)
モデル身長 174cm
意外と、どちらにも向くパンツって少ないと思いませんか。
その上、上品なのに楽というところが長年支持を集めてきた理由の一つだと思っています。
私はダブルタックパンツだけで8本持っています。
生地によって全く表情が違いますし、合わせるものによってどんなシーンにも馴染むので、便利過ぎて手放せないのです。
そして、まさにこれが『身長が高くなくても堂々と似合うパンツ』なのです。
身長 161.8cm、パンツはサイズ2です。
念の為、こちらも写真の加工はしていませんが、わりとハイウェストなので足長く見えませんか。
私は女性にしては小さくない方ですが、男性には大体かないません。
それでもとにかくバランスが取れる。↑どうでしょうか。
これは慣れない自撮りで身を削ってでもオススメするしかない。おーー
ということでした。
内側はドレスパンツの特徴であるマーベルト仕様。
マーベルトには、時には生地の厚みを軽減したり、ウェスト部分を人体の腰回りのカーブにより沿い易くするという役目があります。
またウェスト出しが出来る様、尻ぐりの縫い代を広くとってあります。
こちらもドレスパンツの良いとこ取り。
最近ちょっとお腹周りがワガママで、という方は是非お直し屋さんに持って行ってみて下さい。
3cmは広げられると思います。
Kics Document. / KHONOROGICAの商品はどれもこれも、長く着て頂くことを前提に作っています。
それでも洋服という性質上、寿命はあります。
その時は買い替えを検討されると思うのですが
「形が気に入っているから同じものが欲しいのに、もう売っていない」
ということ、ありませんか。
私は結構あります。それがとても嫌なんです。
品質が高いものほどよく保つので、寿命を迎えるまでに何年も経っている。
そうすると余計にもう手に入らないというのがこれまた悲しいところ。
ファッションなのでトレンドが変われば新しい商品が出てくるのは当たり前ですし、だからこそこの世界は楽しいのですが、
良いものは良い。だからそのまま残してよ。と思うことが多々あります。
うちの商品の特性といいますか、よく頂くのが
「着てみたら凄く良くて、ずっと愛用しています。」
という嬉しいお声です。
見た目は派手ではないけれど、着てみたらしみじみ良かったという、栄養満点おじや系です。
だから、良く出来たものは売り続けます。
リリースした年もシーズンも関係なく、欲しいと言ってくれる人が一人残らずいなくなるまで、あるからね。と言いたい。
だから、無くして欲しくないもの、また欲しいよ、というもの、今度是非聞かせて下さいね。