2019/07/15 18:31
こんにちは。
デザイナーの武石です。
今回が初めての投稿となる【デザイナー's Blog】では、少しずつ、デザインや生地のこと、どうやってKICS DOCUMENT. の服が出来上がっているかなどを中心に、日々感じた事や想いなどを混じえてお伝えしていこうと思います。
記念すべき第1回目は『ロゴ刺繍のおはなし』です。
KICS DOCUMENT. の兄貴分レーベルとして約6年前にスタートした「KHONOROGICA(コノロジカ)」のシャツには、その代名詞とも言えるロゴの刺繍が入っています。小さなパートですがこの刺繍が入ると、なんというかキュッとシャツのお顔が引き締まるような気がします。
知っている様で知らないこの刺繍の世界、実はかなり奥深いのです。
どんな商品でも刺繍の出来の良し悪しで、そのブランドの質やこころざしが分かると言っても過言ではない、面白いポイントだと私は思っています。
ですから、よそでもついつい見ちゃうんですよね、色んなお洋服の刺繍・・・。
さて、そのKHONOROGICAのシャツのお顔というのがこちら
KHONOROGICAのシャツは左身頃の裾付近と、両脇裾のガセット(※)と呼ばれるピースに刺繍が入っています。(※二股に分かれる脇の裾部分の強度を上げるために付けられるパーツのこと)
いかがでしょうか。なんだかこう凛とした感じがしませんか?
家庭用ミシンにも刺繍の機能が付いているものがあるので、何となく想像がつく方もいらっしゃるかもしれません。
しかし!工業用刺繍(いわゆるプロ向け/量産向け刺繍)はそのプロセスからして家庭用とは全く異なるものでした。
想像以上に多くの工程が有り、緻密でクオリティの高いものだということを、私自身この世界に入って初めて知ることが出来ました。
まず、刺繍屋さんにロゴのデータを送ります。
するとこんな風に刺繍用のシミュレーション画像があがってきます。
右の欄には、ステッチ数(針数)や使用する色数、使用する刺繍機の種類などが記載されています。
ここではきちんとロゴデザインのバランスが合っていれば、細かな修正や指示はしません。刺繍というのは、実際に糸を打ってみないと正直その出方が分からないからです。
職人さんと相談しながら「細かな柄であれば、繊細な線を出すために出来る限り細番手の糸を指定する」程度のことは行いますが、ミシンのテンションと糸番手とデザインの相性はどんな熟練の職人さんであっても初めから完璧にはいかないそうです。
次はこのシミュレーションに基づいて実際に生地に糸を打ってみます。
が、ここで企業秘密とも言えるポイントがあります。
KHONOROGICAの刺繍は、より立体感を持たせるために刺繍糸の下にクッション材の様な芯地を噛ませます。
これをどんなボリュームで何枚入れるかが、その刺繍の持ち味を大きく変えるのです。
芯地は水に溶けるので、刺繍した後に水洗いの加工を入れると刺繍糸だけが残り、とても綺麗な仕上がりになります。(画像はお見せ出来ず申し訳ありません・・。)
手書きしてある「パールヨット」というのは糸メーカーさんの名前です。
糸にも色々な種類が有り、糸自体の太さ、ツヤの出るもの・出ないものなど選ぶことが出来ます。
「120/2」とあるのは、糸の番手です。
KDの刺繍はデザインが細かいので、かなり細番手で繊細に再現してもらうことにしました。
糸がデザインに合うことも重要ですが、強度や芯を溶かしても保つ丈夫なものなど、気を遣わなければならないポイントはたくさん有ります。
次に、実際に使用されている刺繍機をご紹介しましょう。
じゃん!!
ご覧の通り、通常のミシンとは全く異る、刺繍専用の機械です。
ボビンや針には何本もの糸が通っています。
刺繍機は一度に一つの刺繍しか打てないため、通常刺繍を専門としている工場さんには、このように何台もの刺繍機があります。
これらはコンピューター制御されています。
先ほどお見せしたデータがインプットされ、同時に一気に刺繍を仕上げることが出来るのです。
しかし、刺繍機というのは非常に繊細なもので、糸のテンションや機械の調子を常に職人や工員のみなさんがしっかり監視・調整し続け初めて美しい製品が完成するのです。