2021/05/10 21:26
こんにちは。
デザイナーの武石です。
今回の【デザイナー’s Blog】は、『威風堂々、シアーナイロンコーチジャケットのおはなし』です。
恐る恐る生存確認をされてもぐうの音も出ませんよ。
と、言わざるを得ぬほどにBlogに顔を出しておりませんでした。しかし私は生きている。
これでもかというほど毎日仕事もしているし、GWだって大分働いたの。
少数精鋭の我が社。(といえば聞こえは良いが、単に小さい会社である)
るろうに剣心の殺陣さながら、真剣携え斬っても斬っても「きえぇぇええええ!!!!」と向かってくる業務の猛者たち。
「われこそが貴社精鋭の一部に」という骨のある武士のようなお方、今すぐに履歴書送って候。
さて。そんな中にあって、今回どうしてもオーディエンスに伝えたい秀逸なアイテムがここにございます。
SHEER NYLON COACH JACKET(シアーナイロンコーチジャケット)。
SHEERとは、「透ける・透け感のある」というもの。
ですがこれスケスケではありませんよ、最初にお伝えしておきますけども。
まず素材についてお話ししましょうか。
こちらの生地、洋服としての耐久性をクリア出来る、極限の細番手のナイロン糸を使って織り上げております。
それに特殊な加工を施すことによってシボ感を出したものでございます。(都知事風)
候補だった色たちも出してあげようね
このシボのお陰で独特の小慣れた雰囲気が出ます。
合成繊維って、なんかツルっとしているイメージありませんか。
それをこんな表面感に仕上げることにより凹凸が出来るので、肌の接地面が減り肌離れも良くなります。
これ、特に春夏のアイテムには非常に重要なポイントです。
汗ばむ陽気にべたーっと肌に張り付いたら・・想像するだけでそんな服、巴(ともえ)投げしたくなりますね。
そうそう、よくナイロンとポリエステルってどう違うの?と聞かれますが、一番の違いはしなやかさです。
ナイロンは、ポリエステルに比べ風合いが柔らかで、肌馴染みも良いです。
ですので、Kics Document. では柔らかくしなやかな風合いのイメージの時にはナイロンを、ハリを持たせたり耐久性が求められるアイテムなどにはポリエステルを選ぶことが多いです。
ただ、糸の番手や加工、織り方によってかなりその特性は変わってきますので、生地選びにはその時々に応じた判断が求められます。
その判断は、すなわちそのアイテムを活かすか殺すか。
まさにデザイナーの腕が問われる場面。知識と経験がものを言う、デザイン業務の大一番であると私は考えています。
他社の洋服を見る時も、外見のデザインがどうこうというより、素材選びに長けているブランドを発見した時、私はグッときます。
自分もそうであった様に、例えば学校出たてのフレッシュな身分ではそうそう良い素材選びというのは出来ないものです。
さて、これはちょっと専門的なお話になりますが、この独特のシボ感を出す特殊加工というのは、ナイロンにしかうまくかかりません。
ええ、既に実証済みです。
ポリエステルで実験して、見事に失敗しました。失敗は成功のもと。ほんとうに。
どのアイテム紹介でも、常に肌触りに関して言及している通り
Kics Document. は、「カッコいいのは当たり前、その上で着る人が快適である」ことを必須条件にものづくりをしています。
今回もその宣言を地で行く、もう一つ大きな声で紹介したいポイントがこちら。
軽い。
私、今日服着てないのかな?と焦るくらいに軽いです。
畳めば手のひらに乗る、エコバッグのようなコンパクトさ。
丸めてバッグにしまってもほとんど場所をとらないのと、シワになりにくいので、この微妙な気温の今時期、毎日お供にしたくなりますよきっと。
もっと言えば夏だって、クーラーの強い室内など、ジャケットやカーディガン持ち歩くのはちょっと・・という場面に、絶対これ。
透け感はというとこんな感じ。
中に白の半袖Tシャツを着用しております。
中にダークカラー×柄物を合わせるとどうかという実験もやりました。
結構強めのプリントですが
そしてなんとこちら、撥水機能があるんです。
証拠画像がこちら。
細かい水しぶきが見えますでしょうか。
Kics Document. 恒例、武石自ら霧吹きで行うアトリエ実験です。
この後デコピンで全ての水滴が落ちました。
まったく水も弾くなんて、完璧か。
こんなに沢山特筆ポイントがあるんだけど、LOOKBOOKだけでは伝わらないのよね。
ということで、渾身のBlogを書くに至っているわけなのです。伝わるといいなぁ。
デザインもこれがまた、ちゃんと考えられているのですよ。
まず、裾のスピンドル。
そのままの状態ですとバサっとしたAラインですが、
これをギュッと絞るとたちまちふんわりバルーン型に。
お好きな位置で止められるので、この様にシャツっぽくも着られるのです。
これ、普通の肉厚なコーチジャケットではこうはいかないので、この素材ならでは、とってもおすすめな着方です。
因みにLOOKBOOKではタックインして完全にシャツのような着方の提案をしています。
このカット、評判良かったんだよなぁ。(幸)
そして実はこのスピンドル、前身頃にのみ通っているので、このようにギャザーが寄るのは前のみ。
後ろにはあらかじめこのようにタックが入っており、自動的に良い塩梅に立体感が出る様になっています。
見えない後ろのギャザーバランスまで気にする必要が無いなんて、心憎い。
あとはですね、もうアウターらしくさらっと羽織って頂く、こんな着方が文句無しに素敵です。
おまけにもう一つ私のこだわりポイントをお伝えさせて下さいな。
こういう一枚仕立てのアウターって、ポケット布が裏からだらーんって飛び出しちゃうことないですか。
あれ、恥ずかしいんですよね。
私はあれがたまらなく嫌です。
なので、少し袋布のサイズを延長して、前立てに挟み込み抑えました。
そうすることによってポケットがしっかりと収まるので、だらーん現象が回避されます。
着用時の小さなストレスを一つずつ潰していく。
LOOKBOOKには映らないけれど、それもデザインの重要な要素です。
このコーチジャケットがこんなにもシンプルなお顔なのに威風堂々としているのは、
そんな拘りの積み重ねがあるからに他なりません。